11,未知との遭遇

4日目の朝。朝食をとりながらソファに座りテレビを見ていた。ほどなくTシャツ一枚の彼が起きてくる。毛むくじゃらの気持ち悪い足がまるみえなので
「何か下ぐらいはいてくれよ・・」
と思いつつ
「おはよー」
いつもどおり挨拶を交わし、ふと気づく。
「!!」
私はわが目を疑った。コーヒーを入れる為、私に背を向けていたおやじのおしりがまる見えなのである。当然後ろをむいてりゃおしりぐらい見えるが、大問題なのはそれが生(?)だということ。つまり、彼は下着も何もつけていなかった。
「ひえーーーーー!!!」
私の脈拍は一気に跳ね上がり心臓はドクドクと高鳴り出した。
彼は平気な顔して私の横に座るとまじめな顔をして新聞を読み始めた。
「(再び)ひえーーーーーっ」
どうしよっ、どうしよっ、どうしよう!
この人・・・変態だ・・・。

思えば、引越しの日。スーツケースを転がしてきた私に向かいのおじさんが話しかけてきた。
「どこの部屋に入るのかは知らないけど、このアパートには変態がいるから気をつけてね」
以前、日本人の女の子が裸足で家に助けを求めに走ってきたことがあるから、といった。
「へえ〜。怖いねえ」
間違いない。こいつだ・・・・・。
大当たりだった。まさか自分がばばを引くとは。くそ〜。何の危害を加える、ということはないが、要は「見せたい」のである。が、露骨に「キャー!」と、いうほど取り乱してもいなかった私は、
「ん〜、どうしようか・・・」
と固まった。
とにかくちんちん丸出しの男の横に座るのだけは絶対に今あってはならない。それだけは確かだったので、私は気づかないふりをして席を立ち、部屋に戻って身支度を整えると当てもなく町へ避難した。彼が仕事へいった頃を見計らって昼前再び家に帰ってくる。と、そこへちょうどアパートの住人らしき日本人の男の子が玄関から出てくるではないか!すかさず彼を捕まえると
「ねえっ!この部屋に住んでる男のこと何か知らない??」
一階の自分の部屋を指差す。
すると彼は
「あ〜、このおっさん変態で有名なんだよ」
と、こともなげに言った。なんでも日本人の女の子ばかりに声をかけ、皆3日で逃げていくという。
「この間ごみ出してたのあんたかあ。新しい人がまた来たなあって思ってたんだ」
5日もいるなんて記録だよ、と彼は私を眺め呑気にいった。
「・・・・・・」
こんなことで記録保持者になってもなあ。せっかく見つけたナイスな家だったのに。どうやらすぐに出て行かなくてはいけないらしい。その場で荷物をまとめて逃げ出しても良かったが、ちょーケチな私は1週間分の家賃を払ったからにはきっちり払った分だけいてやる、と自分の身の危険も顧みず、そんなしょーもないことを考えていた。
せっかくこの土地で仕事見つけて一年暮らそうと思ったのに。どうやら神は私にまだまだ安住の地を与えるつもりはないらしい。おまけに正直、私はサーファーズパラダイスがあまり好きではなかった。楽園といわれている場所だったが、血気さかんな私には極めて退屈な場所であり、たまのバカンスでくるならいいが、こういう場所に腰を落ち着けるには30年早かった。
またまた逆らえない波に飲み込まれている気がした。この場所を出て行く運命なんだ。
仕方ない。またやるか。
10年ぶりに転がしてきた一度しか使ったことのないスーツケースだったが、中の荷物を全てとり出すとただの粗大ゴミと化したスーツケースを再び日本へ送り返した。