| 13、サーファーズパラダイスの人々 |
さて、ここで短いサーファーズパラダイス滞在中に出会った数々の日本人逸話を少しご紹介したい。 知らない人のために“ワーキングホリデー”のことを少し説明したい。これは30歳以下の世界中の若者に与えられるビザで、本来は政府がオーストラリアを良く知ってもらいたいという目的で作ったもの。だから基本的には観光ビザである。ただオーストラリアは広いのでちょっとやそっとじゃ回りきれない。道中お金もなくなるだろう。それなら途中でお小遣いを稼ぎながら旅していいよ、というわけで「ワーキング」しながら「ホリデー」して下さい、というわけだ。若者のための“青春ビザ”といったところか。だから年寄りとか中年の人はビザはとれないの。残念。 来たからにはオーストラリア人や世界の若者と触れ合ったり、大自然に触れる旅をして見聞を深めて欲しいのである。しかし、私も挫折の果ての逃げ道、という決して純粋ではない目的で来たので人のことは言えないが、それでもここにはアホな若者が多すぎる。 例えばある日本人3人組の男の子たちは3人でアパートをシェアして借りていた。部屋では毎日飲み会が開かれているらしく、ビールの缶が山盛りになっている。携帯を片時も手放さずかかってくる相手は日本人ばかり。オーストラリアでは簡単に手に入るマリファナを吸い、同じワーホリ仲間の土産屋かどこかで働いている日本人の彼女をつくり(この女の子だって、絶対日本に別の彼氏がいるくちだ)、オーストラリア大陸をめぐる旅にも行かず、半年も日本人の多いラクで狭い観光地にしがみついていた。もちろん、そんなだから英語は全くしゃべれない。 とても気のいい若者たちで楽しくお酒を飲ませてもらったが、彼らは単に刹那的に日々をやりすごしているように見えた。世界を見る、とか経験するといったことからは遠くかけ離れ、ぬるま湯の中でふやけているようだった。日本で暮らすのと何が違うんだろう?おまけにこの部屋は不動産屋と契約した本人はとっくの昔に日本に帰国し、今はまた貸しにつぐまた貸しで契約者不在という最高にだらしのない状態になっていた。 ある女の子。私が掲示板を見ていると“蛍ツアー”と書かれたチラシが目に止まった。行きたかったが、「催行人数2名」。こういう時一人旅はつらい。誰か他に一人で来ている人を誘おうと思い、私はしばらくその場で張りこんでいた。やがて来た女の子4人組。オーストラリアへきたばかりで今は語学学校に通っており、ホストファミリーの家にお世話になっているという。蛍の話をすると「え〜っ!行きた〜いっ」と大はしゃぎだったが、一人の子がすぐに目を曇らせ 「でも、夜なんですよねえ・・・?」 と、心配そうに聞く。あたり前だ。まっぴるまに蛍見に行ってどうすんだよ。ただの虫だっつーの。彼女は悲しそうに 「わたし〜、ホストファミリーと一緒に住んでるんですよお」 ふ〜ん。・・で?その後の言葉を待つ。しびれを切らし 「えっ?で、あの、何が問題なの?」 遅く帰ると心配するとか、そういう理由かと思ったが次の彼女の一言で私はひっくり返った 「“夕飯いらない”って英語でなんていったらいいか分からないし・・・」 だから行けません、と彼女は言った。私はびっくりして言葉を失った。いくら口の悪い私でも会ったばかりの人に 「あんた馬鹿じゃないの??」 というのはさすがにはばかられ、そんなのは意思が伝わればいいんだよ、「ノー、ディナー」とかなんとか言っても通じるはずだ、と説得したが彼女はそれでもホストファミリーと面倒を起こしたくない、と蛍行きを断念した。夕飯断ることの何が面倒なのか知らないけど、とにかく彼女にとっては何もかも日本でコーディネートしてきてオーストラリアへ単身(彼女にとっては友達が一緒ではない、という意味)渡り、空港に満面の笑みで迎えに来たホストファミリーに家に連行され、日本人ばかりの英会話学校に行っていることが人生最大の大冒険なのだろう。それだけでミッション終了といったところか。こういう人はもっと違うことに才能を見出した方がいいと思う。日本に帰って結婚して元気な子供でも生むとか。その方が社会的に貢献できると思う。(ごめんさないねー、厳しくて。でもホント) さて、もう一人びっくり大和撫子。 私が変態おやじにすぐに出て行くことを告げた時、彼はそんなに急にいわれても次の人がすぐに見つかるかどうか分からない、と困った顔をした。おやじが変態なのが一番いけないのでお互いさまだが、さすがにそんなことは面と向かって言えない。違反だなんだと辺にもめても困るし。困った私が思いついたのは全日本人を敵にまわすような悪魔のような方法だった。 “別の日本人をあてがおう” ある朝公園で適当な女の子が来るのを待った。するとそこへ2人組の女の子が歩いてきた。私はすーっと近づくと部屋が空くので誰か代わりに入ってくれる人を探しているむねを告げた。そういえば余談だけど、私はこうして張り込みをして日本人に声をかけるのが昔から得意だ。思えば学生の頃、一人でイタリアに行ったときに、靴をたんまり買い込みすぎた。たしか8足くらい買ったと思う。おしゃれなヒールばかり。かたっぱしから気の赴くまま買い込んだはいいが、ホテルの部屋でゆっくりはいてみると、 「ん〜、やっぱりいらなかったなあ」 と、いう靴が2〜3足でてきた。当時も当然バックパックだったので皮の靴を無駄に3足も持ち歩くのは絶対に嫌で、どうしようかと考えた。怖いもの知らずだった私は観光客の出入りの多い駅で靴をいれた紙袋をさげてぶらぶらとそれらしき日本人女子を探した。そこへやってきた女の子2人組。すかさず近寄り、なんと私は自分の靴を買わないか?と切り出した。本当に海外に出ると、こちらも向こうも日本では考えがたいような行動をする。こんな怪しい私を彼女らは冷たくあしらいもせずに袋の中の靴を試着してくれた。そして商談成立である。やはり海外では日本人同士というだけで親近感をもたれるので得である。 さて、本題に戻る。と、いうわけで私はまたまた得意の「日本人同士お友達大作戦」を実行した。この町で部屋を探している人はたくさんいるはずだったので声をかけるのは簡単だ。彼女たちのうちひとりは案の定私の誘いに大喜びで家までついてきた。家を見ると私がそうしたのと同じように 「すご〜い!」 と、黄色い声を上げた。ピーターに紹介し彼女が代わりに入るのでよろしく、と紹介。私を気に入っていた彼はやや不満そうだったが部屋を無駄に空けておくわけにもいかずしぶしぶ承諾した。彼女は、やはりオーストラリアへ来たばかりで今はホームステイ中だという。あと2週間で契約が終わるからその後越してくる、といった。お茶をした後笑顔で別れ、次の生贄、いや住人も決まりすっかりこの町を離れる準備ができた。しかし私は、この後100%の確率で彼女に起こるであろうことを思うとやはりいてもたってもいられなくなり、なんと、こんなメールを送った。 「あきこです。部屋の件ですが、あの後重大な事実が判明しました。なんとあのおやじは変態の露出狂だったのです!今までも何人もの日本人が被害にあったそうです。危ないので絶対に行かないで下さい」 と、第3者ぶって、こんなスーパー偽善者なふりをした。 「あー、いいことした」 一人の日本人女子を救った。“自分で罠をしかけて自分で救う”というちょー勝手な満足感に浸っていた。が、しかし。数日後彼女から驚くべき返信が。 「こんにちは、あきこさん。教えてくれてありがとうございます。でも、私ショックでもう立ち直れません。日本に帰ろうと思います」 「???」 私は驚くのと罪悪感とで言葉を失った。なんで?なんでこの子が“ショック”で“日本に帰る”の?被害にあったのは私なのに。彼女はおっさんと会って楽しくお話していただけなのに。それともたくましい想像力でおっさんの露出っぷりを想像してしまったか?とにかくなぜそこで帰国という展開になるのか理解に苦しんだが、自分が蒔いた種でもあるので、なんとか思いとどまらせるよう返信しておいた。その後、彼女がどうなったのかは知らない。しかし、自分のやったことを棚にあげていうことでもないが、そんなことでいちいちピーピー言っているようではこれからの過酷(?)なワーホリライフは生き抜いていけん!そういう人はとっとと日本へ帰ったほうがいい(ほんと、ごめんっ)というのが私の率直な意見だ。厳しいようだけど、海外で生活するというのにそんな精神力の人は日本に帰って出直してきた方がいいと思うのである。 さらに私は、「日本人の女の子ばかり狙う」というピーターにも個人的に腹がたち、町中の日本人がチェックしそうな掲示板に 「ピーターという人に注意!」 “変態!!”とご丁寧に大きく見出しまでつけ、彼の容姿、おやじに見えるけど実は若いこと、アパートの住所にいたるまで全て記入した紙を貼り付けた。住所は英語で書くとおやじに見つかる可能性があるので(敵も同じ掲示板を使用しているからだ)、気を利かせてカタカナで、番地は漢字で書いた。ちなみに数ヶ月後、別の土地でこの張り紙を見た、という人に会ったが、私が書いたことを知るとびっくりし、そして教えてくれてありがとう、と言われた。ん〜、なんか複雑。 |
