| 22, ケアンズへ戻る、が、また出る。マリーバへ |
一体全体何しに行ったのかよう分らん一週間超特急ラウンドを終え、再び私はケアンズへ戻った。しかしこのラウンド中に知り合った青年にケアンズ近郊にある乗馬ファームを紹介されていた。前回の乗馬体験がかなりはずれで終わったので、いま一度リベンジしたかった私は再び乗馬ファームの門を叩くことにした。 ケアンズから北へ車で約1時間半。このあたりはアサートン高原もあり、朝日を見る熱気球ツアーの発着でも有名だ。熱帯の北部ながらも、なんとかその高原地帯がイギリスの片田舎を思わせることもなくもなかった。 ここで私が訪ねたのは「スプリング・マウントステーション」。ジョン&グレースという50代半ばの夫婦で経営している。全体的に小規模で一日のお客さんも4〜5人。一日を通してのゆっくりしたツアー。朝は手作りスコーンと紅茶でお客さまをおもてなし。スケジュールがタイトじゃないので、のんびりとお茶をしながら、世間話。広い庭には犬やらヤギやらカンガルーがうろうろしていたので、お客さんたちは皆大喜びで彼らとたわむれていた。名前こそださないが、前のファームとは大違いだ。あそこは団体客をとるので、一日に何十人という客をさばき、「アットホーム」とはかけ離れているものだった。当然お客さん全員にも目が行き届かず、施設も汚いし、ハエだってぶんぶん飛んでいた。 ここでは馬の数も少なく、お客さんや乗馬器具のケアや衛生管理にいたるまでしっかりと目が行き届いた。前のファームは狭い谷間をちんたら上り下りするだけでたいした景色は見れなかったが、ここでは高原を疾走する。馬も気持ちいいだろう。また眺めも最高。もちろん初級、上級にきちんと分けてくれる。ヨーロッパからきたお客さんはほとんど馬に乗れたので、颯爽と高原を走り抜けていた。そりゃもう、かっこいいの、なんのって。 逆に日本人のお客さんはほぼ100%初心者。いきなり走るともちろん危ないので、ゆっくりとぽっくりぽっくり歩いているが、やはり外国人たちが暴れん坊将軍のようにぱっぱかぱっぱか走っているのを眺めていると、だんだんむずむずしてくる。 「ん〜。走ってみたい・・・・」 ジョンはすかさず「ちょっと走ってみる?」と聞いてくれる。乗馬は、見てるのと実際に乗るのとでは大違いだ。バランスが非常に難しい。しっかりつかまっていないと、あっという間に振り落とされる。すごい集中力が必要だ。そして、彼らは速い。超〜速い。私はここで初めて馬にのって疾走したが、あまりの早さにびっくり仰天、心臓がどくどくした。そしてその感覚はバイクに乗るのとも、自転車に乗るのとも、全く違う感覚だった。 「宙を舞う」 これが私の印象。これはやった人でないと絶対に分らない。馬と一体になり、風を切り、宙を舞う。あまりの気持ちよさに病みつきになる。おもわずよだれがたれそうだ。 そんな感じで調子にのっていたので、私はここでもまた落馬した。よだれを垂らしている場合ではなかった。でも、外国人たちもみなじゃんじゃん落馬しており、それは自転車の練習で転ぶようなものみたいだ。しかし出してるスピードが違うので、どちらかというとモトクロスの練習で転倒したくらいのダメージがある。なので、乗馬の際はヘルメット着用が義務づけられていた。すごくださいんだけど、一度落ちると進んでつけたくなる。「さすが」と思ったのは、外国人のお客さんは5歳くらいの小さな子供も平気で馬に乗せる。そして走らせる。見てるこっちはハラハラものだが、子供らは馬のたて髪にしっかりと捕まり、親猿の背に乗った子猿のように馬と見事に一体化していた。 午前の部が終わると家に戻ってランチタイム。必ず一人は残ってグレースのランチのお手伝いをした。いろんな種類の色とりどりのサラダ、バーベキューで肉か魚を選んだ。食事は外のテープルを囲んでお客さんとスタッフ皆一緒に食べる。これこそ、まさに私が望んでいた生活だった。やっとできた。いや〜、ほんと、来て良かった。 そこには私の他に日本人の男の子とイギリス人の女の子がおり、グレースたちの家の向かいに離れがあって、そこで寝泊りした。決して広いとはいえないが、部屋はきれいで清潔だった。 ここで初めてポッサムを見た。耳がぴょこんと大きく、目がくりくりした有袋動物だ。イメージ的にはグレムリンみたいな感じかしら?愛らしいので人気の動物だ。 ところがこいつがなかなかのいたずら者だった。 ある夜中、私は何かの気配で目が覚めた。部屋は明かり一つない闇。何かがふくらはぎを触っている。小さな、小さな5本の指。何か?・・・いや、これは「誰か」だろ?? 全身にどどどーっと鳥肌が立ち、珍しくちょーパニックになった私はベッドから飛び起きると、バンバンバンっと、壁を片っ端からたたきまくり、手探りで電気のスイッチを探した。明かりがつくとそこには、グレムリンならぬ、ポッサム君が 「あ〜、びっくりした」 という感じで、ベッドの上できょとんと私を見つめていた。ポッサムは5本の指を持ち、その感触は気持ち悪いくらい人間のものと似ていた。 「なんだよ、お前〜・・・」 一人つぶやき、腰が抜けそうだった私は一気に安心したが、さて、この愛くるしい小動物が危害を加えるのかどうかを考えた。ポッサムについてなんの知識もない。抱き上げて外に出しても良かったが、いきなりグレムリンの怖いほうになって噛み付かれると怖いので ほうきで追い払うことにした。「しっしっ」とほうきでつつくと、 「やだよ〜」 というようにおびえて固まるポッサム君を 「いいから行けっ」と、しまいには足で蹴り出した。しかし、こいつはゾンビのようにどこからともなく再び私の元へやってきては眠りを妨害し、あげくのはてにはトイレまでついてきた。なぜそんなになつかれたのか謎だが、よーく調べたら部屋の隅にポッサムが通り抜けられるくらいの穴が開いていた。これをがっちり塞いでからは、二度とポッサムは私の部屋を訪れることはなかった。 夜は満点の星、やさしいオーナー夫妻、いちごジャムと生クリームたっぷりの手作りスコーン、庭で遊ぶカンガルーとヤギや犬。絵に描いたようなすばらしいファーム生活だったが、私はここを一週間で後にした。なぜなら完治していなかった尾てい骨の痛みがこの乗馬で再発し、またまた乗馬不可能の体になってしまったからだ。ものすごく中途半端で無念で本当に悔しかったけど、腰の痛みはそんな思いを許さないほど激しく、乗馬どころか歩行さえ不可能になりそうだった。そんなわけで私は再びケアンズへ戻ることになった。 |

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