25,元彼女

さて、盛り上がった2人だったが、私たちには共通した問題点があった。
彼には元彼女が、私には元彼が、お互いそれぞれの“元バートナー”と暮らしていた。

元彼女の存在とは?
私は普段全く考えたことがない。過去はあってあたり前だし、今彼と付き合っているのは私だからだ。だから元彼女という存在は私にとって良くも悪くもない。「ただのいち個人」である。もちろん「彼の友達」であってもいい。別れた恋人といい友達になるのは大歓迎だ。ところが、彼の場合、事情が違った。

彼らが一緒に暮らしていた理由として家の賃貸契約の問題があった。
あと3ヶ月たったら更新で彼らはめでたくそれぞれの住処を探せる、という予定だったらしい。しかし、その間の彼女からの条件というのが「他の女と付き合わない」というものだった。
このセリフからもわかる通り、気持ちが一方的に離れたのは彼の方で彼女は未練たらたらであった。

彼女わずか21歳。ちなみに彼は36歳。
この嫉妬に燃える若い恋人の怒りの矛先はもちろん私に向けられた。彼女は南米ペルーからの移民だ。背は私より低く、背中まである長い黒髪とそしていかにも気の強そうなペルー女独特の切れ長のするどい目をしていた。

ある日、私達はデートの最中ばったり彼女と出くわした。彼女は私の前に立ちはだかると、両腕を組み、上から下まで品定めするかのように視線を這わせると
「あんたがアキコ?」
と、いきなり私の名前をいった。彼女が私の名前を知っていることに驚いた。後から彼に聞くと、携帯のメールを盗み読みしていたらしい。
「そうだけど・・・」
ものすごく怒っている人のオーラが体からバシバシでていたので私はややたじろぎながら答えた。するといきなり
「あんたたち、もうやったの??」
まっすぐになんの躊躇もなく彼女は聞いてきた。これは失礼だ。恋敵とはいえ、初対面の人間に向かっていきなり「やったの?」はないだろう。確かにそれが一番気になるところではあるが。
答えに窮していると、
「君には関係ない」
と、彼が横から口を挟んだ。彼女は彼を無視して、あくまで私をキッと見据えたまま
「あなた、この人に彼女がいること知ってるの?今でも一緒に暮らしてるのよ??」
「君はもう彼女じゃないよ」
またまた彼が横から口を挟むと、「行こう」と私の手を引いた。

「待ちなさいよっ!!」


ひえ〜。完全に修羅場。私関係ないのに。2人で勝手にやってくれよ〜。
そして彼女は彼を睨むと、今週中で出て行くように通達した。彼はおとなしく承諾し、私たちはそそくさと彼女の前から去った。しかしどうみても彼は彼女に逆らえない飼い犬のような印象だった。

そんなわけで、こういう事態になったからにはお互いに終わった関係の人間と一緒にいるのはおかしい、ということで、それならば、と私たちは一緒に暮らすことにした。
あまりに早い展開のように感じるが、アパートの家賃が週単位で、もともと荷物の少ないワーホリにとっては、引越しなんて宿が変わるようなものだ。荷物なんて30分でまとめることができた。

彼の名義で家を借りたが、私も自分のアパートの契約都合上、まだ引っ越しできず、その変わり毎日のように彼の部屋に入り浸っていた。ある夜2人でテレビを見てまったりしていると、ドアをノックする音が。
開けるとなんと彼女だった。
一体全体何しにきたのかと思ったら部屋の鍵を家に忘れたという。
ルームメイトとも連絡が取れないので、今晩はここに泊まるというではないか。これには驚いた。
すごい神経だなあ。あくまで私を無視して彼とよりを戻す気だ。彼も困った様子で
「そんなこと無理だよ。君だって分ってるだろう?アキコがいるんだよ」
すると彼女はなんとこう言った。
「じゃあ、彼女が自分の家に帰れば」
だって。むむむ。しかしこれだけ自分を嫌いな人間がいるってのも辛い。
私がだまっているとまたまた彼が助け舟を出したが、この内容が問題だった。

「アキコの方が先に来たんだよ」

はあ?なんだよ、それ?!
先とか後の問題かよっ。彼女が先に来てたら、私が追い返されてたわけ?
なよなよと、彼女に全然頭が上がらない彼は結局彼女を車で送っていった。
もちろん、私も怒り心頭で彼が帰ってきてから、彼女が忘れていった自転車のヘルメットを見つけて
「こんなもん置いてってどういうつもりよ!!あんたたちまた会う気?!」
と、隣近所の目も気にせず、夜中にテラスで大声でわめき、そのヘルメットを道路へとたたきつけた。


ちなみにこの子、私が日本に帰ってからも彼のメールから勝手に返信してきて

「日本人の女って30過ぎると誰も相手にしてくれないから、オーストラリアに男探しにくるんでしょ?」

というすごいメールを送ってきたりした。
くそ〜・・・。このガキ。いってくれるじゃねえかよ。
若さとは残酷だ。

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