| 26, アイ ラブ 同居生活 |
さて、元彼女とのどたばたもなんとか落ち着きをみせ私は彼の部屋へと越してきた。 一緒に暮らしてみると彼は“優秀な同居人”だった。 きれい好きだし、外国人らしく私が料理を作ったら彼が洗う、というシステムは当然のしつけとして身についており、そしてもちろん彼も料理を作った。 何を作ってもおいしいと言ってよろこんでくれ、食後にはたらふく食ってソファでトドのようにひっくり返って動けなくなっている私に必ずコーヒーとビスケットを運んでくれた。 ワイシャツのアイロンも自分でかけ、洗濯もするし、洗濯物もたたむ、ベッドはいつもきれいに整えられており、トイレや風呂場、シンクの掃除、全てやってくれた。 もちろん私もやったが「時間のあるほうがやる」という、なあなあになりがちなルールがきちんと成り立っていた。 バルコニーではバジルとプチトマトを育て、休みの日には車を洗う。ガイド仲間からも評判のいい彼と一緒にいる私を誰もがうらやましがった。そして彼は私が人生初出会った本格的なベジタリアンでもあった。 時々ダイエットのために「なんちゃってベジタリアン」をするのが日本人のレベルだが、彼は肉を一切食べないのはもちろんのこと、魚も貝もたらこもだめ、そしておそろしく健康志向で、ミルクは低脂肪もしくは無脂肪 油は極力使わず炒め物よりも煮込みや蒸し物が多く、パンは自分でベーキングマシーンで2日に一度は焼き、トーストにもマーガリンは塗らない。彼のお気に入りは何もぬらないこんがり焼いた自家製パンの上に低脂肪のカッテージチーズ、もやしにドライトマト、かるくこしょうをふりかけたオープンサンドだった。 「うさぎのえさじゃあるまいし・・」 と最初は相手にしていなかったが、食べてみるとこれがすこぶるうまかった。 素材本来の自然な味、ドライトマトの塩気。こういったヘルシー食生活に慣れるともう食パンにマーガリンのようなギトッとしたものはかえってうるさく感じるようになった。 最初は私専用のフルファット(全脂肪)ミルク(ローファット(低脂肪)ミルクはどう考えても牛乳を水で薄めてるとしか思えず、カフェオレにするとなんだか水っぽくてまずい)、フルファットヨーグルト、ソーセージなど、彼と食材を分けていたが、だんだんと二つ別のものを作るのも面倒くさく、またオーストラリアのなんでもでかい食材では冷蔵庫がすぐに一杯になってしまうせいもあり、私は彼と同じ物を食べるようになった。 ところがベジタリアンはやってみると何も難しいことなどなかった。 その理由は私自身元々たいして肉を食べないせいもあるが、なんといってもオーストラリアは肉がまずかった(あくまで主観です)。“オージービーフ”は有名だが、チューインガムのようにいつまでたっても口の中でクチャクチャと飲み込めず、日本の肉の味の繊細さに比べるひどいものだった。 土地が広けりゃいいというものではないのである。こぶりだけれども確かな品質、でかくて安いが大味。なんだか国民性をそのまま表しているようだった。 ソーセージは豚臭く、パックの肉も“こまぎれ”や“うすぎり”が存在しない。わざわざベジタリアンにならなくても、私はこの国で肉を食べる気になれなかった。 もともとハマリ易い性格なので私はこの健康生活がえらく気に入った。野菜だけのレシピを考え、寿司を作ったり、野菜だけの親子丼や餃子など、意外と野菜だけでもいろいろなものが作れることを知った。腹持ちがよくヘルシーなお米を彼はえらく気に入っており、おかげで我が家はほとんど和食だった。 私の場合ベジタリアンを強制されてるわけではないので、時々むしょうに肉が欲しくなるとケンタッキーでチキンだけ注文し、がつがつとむしゃぶりついた。頭ではなく体が肉を欲しているんだと思う時がある。 それは決まって生理の前だ。体からあれだけの量の血をドクドクと垂れ流しているわけだから、肉ぐらい食っとかないと体が持たない気がする。「これから出るぜ!」という体の声か?それともメスの本能か? |
