29, 日本女子の奇行

あるクラブは
「ミートマーケット(それにしてもすごい名前だなあ)」
と別名をつけられ、体に飢えた男女が一夜の相手を探していた。
リゾート地のせいもあるが、女の子たちはかなり露出の高い、体の線を強調するセクシーな服を着ていた。
踊る女たち、壁際にグラスを片手に寄りかかり、女を見定める男たち。
女の子たちも行きこそ友達と一緒だが男を見つけ次第その場で即解散、という感じだった。
フロアのあちらこちらで、濃厚にキスを交わす即席カップルをみることができた。
日本人に限らず、欧米の女の子たちもかなりの乱れっぷりだった。

私が一時滞在した「ガールズバックパッカー」というその名の通り女の子限定のホテルには
違う意味での“ピッキング”に来てる子がたくさんいた。

彼女たちの第一の目的は外国人の彼氏を作ること。

それに命をかけていた。
中でも一人、郡を抜いてすごい子がいた。
20代前半の彼女は毎晩のようにクラブへ出かけ、翌日首に痛々しいくらいべったりとキスマークをつけて帰宅した。
彼女は釣った男の数を勲章にしており、ターゲットは外国人に限られていた。
たまに日本人の男にナンパされると、

「日本人の男に声掛けられてさあ、むかつく!」

と、怒っていた。
露出の高い服を着た夜と、めがねをかけて部屋着のムームーを着ている昼の彼女はとても同一人物には見えなかった。

また彼女のすごいところは英語がろくに話せないところである。
気になる異性ができれば当然昼間に手をつないでショッピングやらデートやらにいくわけだが、そんな時は会話が続かず、電話で友達を呼びだしたりしていた。
犬や猫なら確かに会話がなくても無条件に愛しいが、人間はそういうわけにはいかないのである。やはり男女関係には会話が必要なのだ。

ケアンズは港があるので、時々アメリカから軍艦がやってきて一夜停泊した。
そのときは白いセーラーを来たネイビーの青年達が町に溢れる。
アメリカ人狙いの女の子たちはその夜はおしゃれをしてクラブへ繰り出す。

「あたしは絶対アメリカ人(としか寝ないの)」

オーストラリアに住む日本人にはオージーに愛想を尽かし、別の外国人を探すという人もいた。
うっかり妊娠してしまう子もいたし、遊びが本気になって捨てられてしまう子もたくさんいた。
ワーキングホリデー生活ではとにかく異様に“妊娠”という単語を耳にした。
避妊に失敗した子に助けを求められ病院に代わりに相談に行った事もある。
おかげで私は一度も妊娠したことはないが、この手の話に妙に詳しくなった。
ちなみにこれからオーストラリアへ行く女子のためにいいこと(?)を教えてあげよう。

もし
避妊に失敗したら病院へ直行し、“モーニング・ピル”というものをもらって下さい

ピルは言わずと知れた避妊薬だけど、このモーニング・ピルはすごく強いピルで性交後48時間以内(多分。要確認)に飲めば、精子を殺せるものらしい。
ただし、とても強い薬なのでもちろん副作用の可能性もあるし、そう頻繁に飲んでいいものでもない。
本当に特別な最後の切り札。
「私の彼は大丈夫」
とは言っても、将来の誓いも貯金も保証も何もないのに、避妊させない男は私からみたらその時点で責任感のかけらもない。
望まれない妊娠はどう考えても損をするのは女です。
賢い女性ならば、将来のためにも、自分の体は自分で守りましょう。
あと、付き合いだして間もないのに「I love you」とか言ってくる奴もかなり怪しい。
たいした責任感は持っていないと思ったほうがいいでしょう。

ワーホリでくる子の多くは日本に彼氏がいる。
一年間のお約束で、泣く泣く成田で別れる。
ところが空港に降りたとたん、そこには逞しく、ジェントルな外国人のお兄さんたちが。
英語でささやかれる愛の言葉も映画のように魅力的だ。
私が見てる限り、ほとんどの人がこっちはこっちで別に男を作り楽しんでいた。
旦那をおいてきた人もいた。理解のある旦那は奥さんがクラブで男と抱き合うことを許す寛容さがあるだろうか??

一歩日本を出ると、やはり日本での現実は薄くなる。
オーストラリアの生活が、自分の廻りのことだけが唯一の現実となるのだ。
異国で寂しい女の子には電話やメールで交わす彼氏との会話より、やはり抱きしめてくれる生身の腕が必要なのだろう。
外国人というだけで日本人にはかっこよく見える。私もそんな時代があったのでよく分る。
観光で来た女の子達はサファリパークのガイドを指差し
「ガイドさん、あの人かっこいいですね」
と、いたずらっぽく私にささやく。
見るとただの若い外国人である。

「気のせいですよ」

目を覚ましてあげるのもガイドの仕事。
ガイドとドライバーカップルも多く、狭い世界なので、誰々の彼氏は誰々の元彼、なんてのもよくある話。
男女関係は大いに乱れていた。

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